「あなたの土地は大丈夫?」知らないと損をする地盤のこと vol.27

このページで使用している画像、文章は「株式会社 扶桑社」の了承を得て転載させていただいております。
「新しい住まいの設計」

1996年3月号

(解説・監修 ジオテック株式会社 住宅地盤相談室)

地震から身を守るのはやはり自分自身。さて何から始める?

兵庫県南部地震では、活断層や地盤が広く関心を呼びましたが、テレビや雑誌で震災の惨状を目の当たりにした人の多くは、さて、自分の住んでいる地域の活断層や地盤の性状はどうなっているのか、漠然と不安を抱えていらっしゃるのではないでしょうか?

しかし、その不安を解消するにも、どこへ相談したものか、そもそも相談を受け付けてくれる窓口があるのかさえ分からないというのが現実ではないかと思います。市区町村の役所から発行されている「官報」を読んだところで、不動産売買に関する法律相談などの案内はあっても、どのくらい揺れやすい地盤であるかとか、断層の真上なのか、少しでもはずれているのかといった、具体的に突っ込んだアドバイスを受けられそうな告知は見当たりません。

その意味では、以前本誌10月号で紹介した横浜市の無料耐震診断は画期的ですが(注1)、後にも先にも他の自治体で同様の施策を打ち出したという話は聞きません。

もともと地震や地盤については、結局起きてみなければ分からない「予測」という微妙な問題が含まれているだけに、役所で積極的に取り扱いづらい面は確かにあるのですが、自分のところで対応できないのであれば、せめて耐震診断や地盤調査を依頼できる機関または会社を紹介するくらいの労をとってもらえないものかと思います。

そうこうするうちにも各地で地震は起きていますし、おおかたの地震の専門家は、数年前から日本列島全体が地震の活動期に入ったと明言しているので、不安を抱えたまま座してその時を待つのでは、あの大震災があっただけに何ともやり切れません。

一方で行政に頼らずに今からできることから草の根の運動を始めている人びともいないわけではありません。たとえば、「横須賀活断層調査会」。関東でも比較的明瞭に活断層の存在が知られているのが三浦半島です。切実な思いを共有する有志が集まって、断層の見学会を開催したり、住宅地図に断層を記入するなどの活動を行っています。

「民間地震対策研究会」(注2)はさらに広範囲に首都圏在住の個人・法人の会員を対象に、建物の耐震診断や地盤の検討を行っているグループです。ひとくちに地震対策といっても、生活全般に対策はかかるわけですが、「民間」というだけに視点はあくまでも日常生活に根ざした問題を取り上げており、地盤や建物の耐震性はもとより、家具の留め方から始まって、マンションの区分所有法にいたる法的な課題まで、会報の「地震PRESS」を読むとハッとさせられる情報や指摘に出あいます。最近では、企業から社員寮の候補地選定の依頼があったり、そのユニークさから行政の諮問機関なども注目しているとのこと。

東海地震を控えて神経をとがらせている静岡県では、食料を自治体としては備蓄しないので、各家庭で非常食を確保するよう呼びかけ、行政への依存は幻想に過ぎないことを宣告すらしています。それだけ背水の陣でせっぱ詰まっているとも受取れるのですが、兵庫県南部地震で思い知らされたように、行政が対応できたことはごくわずかであって、やはり自分の命は自ら守らなくてはならないようです。漠然とした不安を抱いていても何の得にもならないのですから、まず気掛かりなことからでも民間地震対策研究会に相談してはみてはいかがでしょう。

(注1)横浜市建築局では、1980年以前に建てられた木造家屋28万戸のうち、むこう3年間で1万2000戸を対象に耐震診断を行う予定で、すでに作業が始まっています。
(注2)民間地震対策研究会(横浜市)TEL 045-562-1155