「あなたの土地は大丈夫?」知らないと損をする地盤のこと vol.15

このページで使用している画像、文章は「株式会社 扶桑社」の了承を得て転載させていただいております。
「新しい住まいの設計」

1995年3月号

(解説・監修 ジオテック株式会社 住宅地盤相談室)

相談内容

神奈川県 寒川町 川田英一さん(仮名・35歳)


建売住宅を買って4年、最近窓の開閉ができなくなって、家が傾いていることがわかりました。建てた工務店に責任は問えないのでしょうか?


窓枠がゆるんでサッシの開閉ができなくなったことから、建て売りで買った家全体が傾いていることが分かりました。地元のこの家を建てた工務店にその旨を伝えて、実際に見てもらい、とりあえずサッシを固定しているネジを調整してもらい、なんとか開閉はできるように応急の修繕はしてもらうことができました。

ところが、家の傾きを直すことについては、すでに築後4年を経過しているので、無償の保証期間は終了しているとの説明があり、サッシの修繕も最低限の工務店としての責任としてサービスさせてもらったとのこと。

工務店の対応は誠意の感じられたもので、けっして責めるつもりはないのですが、生涯の住み家と考えていた我が家が傾いているというのは、がっかりというか、無念で仕方ありません。

そこで相談です。本当にこれ以上の保証責任を問うことはできないのでしょうか。

回答

土地や建売住宅を新規に購入する方は、まさか自分の家が傾いてしまうなどとは予想もしないのでしょうが、売買契約書を交わす時点で、売主側がどのような保証を付けてくれるのかを十分に確認しておくことが非常に重要です。とくに契約書にはあからさまに記載されていませんが、免責範囲がどうなっているのかは、念入りに聞いておかなくてはなりません。

というのも現在の民法上では「瑕疵担保保証」の正当な期間というのは、1年間しかなく、それを過ぎて法的な責任を問うことは不可能だからです。地盤の相談室へは、実際に不同沈下してしまった建物についてのさまざまご相談がありますけれども、ほとんどの場合は泣き寝入りするほか、手の打ちようがないというのが現実です。裁判で訴訟に持ち込んでも、勝訴となる事例は稀で、民事上も建築基準法上も、厳格な規定がないことには救済措置を取りようがないのです。

したがって、残る手段は自衛策しかありません。建築会社が「瑕疵保証期間」を何年に設定しているか、契約書には期限が明確に謳われているかどうかを確認することはもとより、少なくとも地盤調査を実施しているかどうか、その調査結果にもとづいて建物の基礎仕様が決定されているか必ずチェックしてください。そのことを見過ごさないようにチェックするのは、とどのつまり買い手であるご本人なのです。

土地や建物を見た上で納得ずくで購入することを決断し、しかも契約書にも判を押しているのであれば、売り手を責めるのは筋が違います。何がトラブルが起きて後悔してもあとの祭りなのです。最近では瑕疵保証期間を10年としている住宅メーカーなどもありますから、たしかめておくことをお勧めします。

ところで、1995年7月にはPL法(製造物責任法)が施行されることになっているのをご存じでしょうか。すでに契約済みの方には適用されませんが、7月の施工後には、最低10年間のPL責任が派生することが予想されています。

住宅という商品は、部材の寄せ集めであって、直接的には住宅そのものが製造物というわけではないために、どこまでPL責任が問えるのかという議論がまだ残っているのですが、すでに住宅関連の各種団体では「住宅産業分野・PL法の手引き」を発行して建築会社や工務店の啓蒙に努めています。


教訓

建売住宅を買う時はまず「瑕疵保証期間」は何年かを確かめ、地盤を調査しているかどうかをチェックしてください。