「あなたの土地は大丈夫?」知らないと損をする地盤のこと vol.11

このページで使用している画像、文章は「株式会社 扶桑社」の了承を得て転載させていただいております。
「新しい住まいの設計」

1994年11月号

(解説・監修 ジオテック株式会社 住宅地盤相談室)

相談内容

東京都 世田谷区 松原英二さん(仮名・38歳)


同じ地域の高台から駅に近い敷地に移りましたが、土地の色が違います。土の色で地盤のよしあしはわかりますか?


松原さん一家は、今、住んでいる家を姉夫婦に売って、同じ地域のもっと駅に近い敷地に移ることになりました。姉夫婦が松原さんの家を壊して建て替えることになったのですが、その際に道路を拡幅する必要から境界線を奥のほうに後退させなくてはならなくなり、道路に面したところにある長年丹精した梅の木を庭先の邪魔にならない場所へ移植することになりました。

土を掘ってみると、表面がこげ茶色で、その下が赤茶色の土だったそうです。赤茶色の土は、シャベルにかたまりのまま付着して、いちいち払い落とさなくてはならないほど締っていたそうです。

「父からの代のその家は高台にあって、地盤は決して悪くないと思うのですが、土を掘ってみた感触からもそれが分かったと姉は言います。ところがすぐそばですが、坂を下った先の今度の私の家が立つ土地は、掘り返した土をのぞいてみると赤土ではなくて、もっと黒ずんだような灰色でした」。ちょっと離れただけでこんなにも土の色が違うのかと、松原さんは驚いたのですが、坂を下った分、ここは地盤がよくないのでは---と心配にもなりました。さて土の色や種類によっても地盤の良し悪しは分かるものなのでしょうか。

回答

土の色によって地盤の性状が分かるかというご質問ですが、ある特殊な土については見た目で判別しやすく、しかも明瞭な性質を持っているものがあります。その中からいく種類かの土について簡単にご説明しましょう。

日本は列島全体を火山帯が縦横に走っていますが、今から約1万年前は火山活動が活発で、各地に火山灰を厚く降り積もらせました。国土の3分の1以上がこの火山灰によって覆われていると言われています。

はじめはふんわりと積もっていたものが、科学的に変化しながら、1万年という想像を超える時間の経過とともに次第に締った状態の土になります。そのような火山灰を総称して「ローム」と言い、中でも富士・箱根から噴出し、現在の関東平野一帯に降灰した火山灰を「関東ローム」と呼んで、良好な住宅地盤として重宝がられているのです。

火山が噴出する溶岩の成分によって、火山灰の色は一様ではありませんが、関東ロームの場合は鉄分を非常に多く含有するために、酸化して赤褐色になります。お尋ねの赤茶色の土は、おそらく関東ロームに間違いなかろうとおもいます。ご指摘のように粘り気が強い上に、適量の砂分が混ざっていることから、土の粒子同士がこすれ合って生じる摩擦力が加味されて強い地耐力(地盤の強さ)を発揮します。

東京には「赤羽」という地名や、世田谷区内に「赤堤通り」という道路があるのですが、これらの名称は崖や斜面の土手に関東ロームが断層としてくっきり見えることから名付けられています。

一方、黒ずんだ灰色の土ですが、おそらく軟弱な「シルト」と呼ばれる土ではないかと考えられます。通常、軟弱な地盤は低地に見られますが、低地といえば水の集まりやすい場所であり、水を含んだ土は黒ずんで見えるのです。水といっしょに土が絶えず移動するので、土は締ることなく柔らかいままです。せっかく降り注いだ火山灰も水に流されてしまうので、低地にはロームが堆積することがありません。

さらには低地の湿った土地には、アシ、ヨシ、イネ科の植物、コケなど水辺を好む湿地性の植物が繁茂します。毎年、冬枯れして折り重なった植物の腐敗によって分解して土と同化していくのですが、物(有機物)が腐ればどのような色になるか。野菜でもなんでも、皆さんがよくご存知のように黒くなるのです。専門的にそのような土を「有機質土」または、「腐植土」といい繊維が絡んでスカスカで、しかも水分を大量に含んでいることから、ちょっとした外界からの刺激でも圧縮してしまうほど鋭敏な土です。住宅地盤としては言うまでもなく最悪です。

なお、松原さんのお姉さん宅の表層のこげ茶色の土ですが、これも腐植土の一種です。高台には湿地性植物が生育するわけはありませんので、低地の軟弱層とは異なります。実は、台地が雑木林であったころに、落ち葉が積もって腐敗し、火山灰のロームと化合した土なのです。足跡が残るくらいフカフカした土で、1メートル前後の厚さで堆積しています。そのまま基礎を載せると沈下してしまうので、砂利などをまいて締め固める必要があります。


教訓

土の色で、ある程度の地盤のよしあしは分かります。関東の場合、赤褐色の土は○、黒ずんだ土は×の場合が多いのです。