「あなたの土地は大丈夫?」知らないと損をする地盤のこと vol.1

このページで使用している画像、文章は「株式会社 扶桑社」の了承を得て転載させていただいております。
「新しい住まいの設計」

1994年1月号

(解説・監修 ジオテック株式会社 住宅地盤相談室)

相談内容

千葉県 船橋市 大石暢子さん(仮名・40歳)


「5年前に大手建設会社の建売り分譲地の一画を買いましたが、現在家がかしぎ、流しやトイレの排水が逆流することがあります。半年に一度は配水管の目詰まりをとる作業をしなくてはならず、困りきっています」


大石さんが現在の建売住宅を買ったのは5年前のこと。新聞に大々的に出ていた大手建設会社の広告を見て、ここなら住みよさそうだと、いっぺんで決めたと言います。

「全体で300戸もある大規模な開発でしたから、街全体が整備され、価格も同じくらいなら、同じくらいの生活レベルの人たちが集まって暮らしやすいと思ったんです」

ところが同じようにいかなかったのが、”地盤”でした。60坪の敷地の真ん中建つ大石邸ですが、よく見るとどうも家屋が一方向に傾いているようなのです。

「初めは家が傾き始めたなんて思いもよりませんでした。でも2年ほど前から排水の具合が悪くなり、そのうち逆流するようになって、わかったのです。生活排水が逆流するのは家の下の地盤が沈下しているせいだって!」

300戸の大規模開発だから大丈夫と信頼して買った建て売りだけに大石さんは大ショック。

「うちの土地のあたりはもともと沼地だったところを埋め立てして造成した場所らしいんです。でも買う前にはそんな説明なかっかたし、なんでうちだけが...と悔しく、不安な毎日」だと言うのです。

回答

大石さんの住む地域に限らず、大規模な分譲地には、必ずといっていいほど谷筋や川の氾濫低地が入り込んでいて、地盤の良好な区画と軟弱な区画が混在しているものなのです。ことに近年の地価高騰のあおりをうけてからは地盤のよいところだけを確保して大規模な開発を行なうのは、まずムリと言ってもよい状況です。こうした場合、谷を埋め立てどこも整然と区画してから売りに出されますから、もとの地形を想像することができず、販売価格は同じでも不運にも地盤の悪い区画を買ってしまうということは起こるわけです。

大石さんの場合もそれで、軟弱地盤だったために”不同沈下”を起こしているものと思われます。”不同沈下”とは地盤が均等に沈まない沈下を言い、これが始まると、家の基礎にクラックが入る、道路から引き込んでいる埋設物、水道管や排水管が曲がる、ひどい時は折れるということが起こります。大石さんの場合は、道路側の配水管の方が高くなって逆流しているのでしょうが、もっと怖いのはガス管です。これ以上沈下が進むようですと、基礎だけでなく、柱、梁、壁、窓枠、天井、屋根にも影響を与えるようなことがあるかも知れません。

大石さんのように既に家が建ってしまっているときの、沈下修正の方法というのはとても限られており、また費用もとてもかかります。造成地を買う場合は、造成以前の「地形測量図」や「造成計画図」などを請求し、自分の買おうとしている土地がどういう地形にあったのか、調べるくらいの慎重さが必要です。もし盛り土をしてあるのであれば、何メートルくらいの盛り土をしてあるのか調べ、実際にその土地を掘り返して瓦礫などガラが混じっていないかチェックしておく心構えも必要です。


教訓

大規模開発の造成地だからといって地盤はどこも同じではありません!