「あなたの土地は大丈夫?」知らないと損をする地盤のこと vol.28

このページで使用している画像、文章は「株式会社 扶桑社」の了承を得て転載させていただいております。
「新しい住まいの設計」

1996年4月号

(解説・監修 ジオテック株式会社 住宅地盤相談室)

地盤の良否は地名からもわかります。

兵庫県南部地震では、活断層や地盤が広く関心を呼びましたが、テレビや雑誌で震災の惨状を目の当たりにした人の多くは、さて、自分の住んでいる地域の活断層や地盤の性状はどうなっているのか、漠然と不安を抱えていらっしゃるのではないでしょうか?

土地が付近等に沈む「不同沈下」は建物にとって大敵です。地盤が軟弱ですと、建物の重みを支えきれずに、沈下が生じますが、数センチ程度まで沈下が進行すると、部材がゆがみ始め、基礎に亀裂が入ったり立て付けが狂ったりして、次第に日常生活に支障をきたすようになります。
そのような困った事態に陥らないためには、建物を建てる前に地盤の良否を察知して、それなりの措置を講じておく必要がありますが、地盤の良否を知る良い手がかりなるのが「地名」なのです。

ある場所の地盤が悪いという場合、そこの地盤が悪いのにはちゃんとした理由があって、詳しい説明は省略しますが、水の集まりやすい低地が実は軟弱地盤なのです。事実谷などの低地に立地している宅地で地盤調査をすると、データは決まって軟弱な値を示します。

すなわち、地名を手掛かりにするのであれば、低地を意味するような、たとえば「窪」であるとか「溝」などの字が付く地名や、水辺に関係のある、たとえば「沢」や「河」などの字の付く地名をピックアップすることによって、地盤が軟弱かどうかをおおよそ予測することができるのです。

「川、沼、池、田」などの直接的に水を連想させるわかりやすい字ばかりではなく、危険を知らせてくれる字は、下記のようにさまざまなバリエーションがあり、かつての生活の知恵と土地利用の形態から名付けられたであろう地名には、思いがけない工夫があります。必ずしも町全体が低地でないにせよ、その一角には必ず地盤の悪い地形が潜んでいます。最寄りの地域でこれらの地名を探して、低地かどうか確かめてみてはどうでしょう。

ただし、町名の統廃合や大規模分譲開発などに伴って古くからの地名が失われ、新興の人工的な町名が乱立するに至って、地名を頼みに地盤の良否を問うことは困難な状況になりつつあります。「大宮市プラザ」であるとか「横浜市緑区美しが丘」などの町名からは、そこがかつて水田地帯や谷が入り込んでいたことなど想像しようもありません。

いかにも作意的だと考えられるような命名を疑うならば、土地の登記簿に記載されている「地名地番」を見たり、役所の住居表示係などに問い合わせをするのもひとつの方法です。

地名地番は、法務局に土地を登記する際のいわば「戸籍上の本名」のようなものなので、生活の便利さのために整備した住居表示よりも、古い地名が痕跡として残っている可能性があります。

No. 分類 文字
1 さんずいの付く字 水、澄、淀、潮、汐、清、落、洗、浮、流、湘、汲、濃など。
2 地形から 島、崎、津、江、洲、潟、浦、沖、瀬、浜、磯、海、淵、溝、川、河、岸、泉、滝、沢、池、谷、窪、坪、裾など。
3 水辺の動物 鷺、鴨、鶴、鵜、鴻、池、亀、蟹、貝、龍など。
4 水辺の植物 稲、萩、井草、葦、芦、管、蒲、蓮、柳など。
5 人工の構造物や物 田、掘、濠、堤、舟、井、橋、渡、坂、網など。
6 土質から 泥、砂、須賀(砂礫)、五味(微細な土砂)など。