住宅地盤相談室に寄せられたご相談内容 No.81

相談内容

東京都大田区の自宅に関して、相談させて頂きます。

症状としては、コンクリート基礎部分に10数箇所ほど縦10-20センチほどのクラック、地下駐車場にも網目の様なクラックが生じていることに昨年の12月ごろに気が付きました。

住宅メーカーに連絡したところ、空気の乾燥によるヘアークラックで、エポキシ樹脂の注入で補修すればよいとの回答がありましたが、クラックの数が多いので、心配になりメールいたしました。

当該住宅は、昨年の12月に着工、引き渡しは今年の6月で、建ててからまだ半年ほどです。 立地は、もともと大手企業の社員寮だったところをデベロッパーが宅地造成して建て売りもふくめ30区画ほどに小分けした一角で、環七から登ったところです。 着工前に、地盤調査を行なったところ、改良の必要があるとのことで、費用をかけて表層改良を実施しました。

私は、次の理由から不同沈下が始まったのではではと危惧しております。

  • 当該住宅はいわゆるツーバイフォーですが、4角のうち1個所にすきま(亀裂)が見受けられる
  • 駐車場のU字溝のところにもすきまが見える
  • 地盤改良を実施したときに、地中から以前の建物の基礎と思われる埋蔵物が出てきた
  • 基礎をつくる重要な時期(昨年3月)に雨が降り続いていたので、基礎がゆるんでいる可能性あり

このまま住宅メーカーがいうように、樹脂注入で補修してよいもでしょうか。また、半年ぐらいで、こんなに多くのクラックが入るのでしょうか。基礎にクラックが入った住宅は万が一の転売のことを考えると、資産価値が落ちるのではかと心配です。

回答

  • この街区の西隣は谷地であり、造成地の中でも西寄りの区画ほど地盤は軟弱で層厚も厚いと推定されます。
  • 基礎にクラックが発生する場合、問題となるのは建物が不同沈下しているために、基礎に無理な力が作用してクラックが発生している場合であって、材料の乾燥による収縮クラックであれば、エポキシ樹脂の注入で修復が可能でしょうが、不同沈下の場合は、その進行に伴って修復箇所に再度クラックが生じるために、基礎自体の沈下を抑制しない限り、不具合が修復されな いことです。
  • 収縮クラックであるのか不同沈下であるのかを区別する方法は、時間をかけて様子を見るという手段がもっとも確実です。すなわち、基礎の上端をレベル測量し、同じ箇所について3ヶ月(または半年)ごとに定点観測することで、数字の変化を読み取るのです。収縮クラックであれば基礎の高さは上下しないはずです。
    ※ 当社ホームページの沈下測定のコンテンツ参照
    http://www.jiban.co.jp/tinka/sokutei.htm
  • 材料の乾燥による収縮変形は建築後1年以内に発生することが多いのに対して、不同沈下は数年後に顕在化し始め5年程度で終息に向かう事例が多くなります。
  • 建物の資産価値は我が国では築後10年程度で消却されるのが一般的なので、建物の不具合が減価要因となるような鑑定評価は、ほとんど行われていないのが 現状です。(是正される必要がありますが。)

【 お願い 】

ご相談の事案に対する回答は、限られた情報によって推測される所見であることをご承知ください。
したがって、この回答を直接的に交渉や請求の手段とすることはご遠慮くださるようお願い申し上げます。