住宅地盤相談室に寄せられたご相談内容 No.71

相談内容

八王子市上柚木の野猿街道沿いの建て売り物件の購入を予定しています。

当初施工会社の説明によると、10年程前まで田んぼであったが、田んぼを潰して10年以上経過していて地盤は安定していることと、回りの建物や道路状況から判断し布基礎で問題ないというでした。
しかし、心配だったので知り合いの紹介で某大手建設会社が調査依頼を出している地盤調査会社に調査依頼をしました。

調査方法はスウェーデン式サウンディング試験で調査の結果、調査範囲の推定土質は粘性土で、換算N値は、表層から1.25mまでは4.2~10.2、1.25m~3mまでの層は1.5~3、3m~3.5mまでの層は3.8~5.8、それ以深は15とうい結果でした。 調査会社の報告によると、推奨する基礎は柱状改良を行った上で布基礎が良いとのことでした。

ただし、建物が「そう2階建て」であればベタ基礎にして基礎の鉄筋を多く太いものにすれば問題ないとのことでしたが、軟弱地盤は地震を伝えやすい傾向があるので、いくら上層が布基礎もしくはベタ基礎で問題ない地盤であっても、やはり地震の際に建物に悪影響をあたえるのではないかと心配です。

基礎施工方法の選定はその土地により様々だと思いますが、一般的にどのような基準で施工方法を決めているのでしょうか。
また、1F床面積が15坪程度の場合、柱状改良費用はいくらぐらいかかるのでしょうか。

なお、物件は最近話題になっている高耐久住宅で、10年保証です。また、施工会社にこの結果を伝えたところ、市の建築課と相談した上で基礎をどのようにするか検討するとのことです。

回答

メールでのご相談の他、FAXなどの資料・ご相談内容についても回答しておりますので、上記の相談内容と回答の内容がちぐはぐな印象を与えますことご了解ください。

  • 計画地は報告書に記載してある「北側山林の裾地」ではなく、「谷地」です。
  • 地層構成は上から、1.砂利混じりの盛土(-1.5m付近まで)、2.谷地に堆積した軟弱層(-3m付近まで)、3.河床の砂礫、の順で三層になっています。
  • 造成が10年前に行われたのであれば、途中の軟弱層は上部の盛土荷重によってかなり圧縮されているはずですが、建物を新築する際の荷重の増加に伴って、あらたな沈下のスイッチが入ります。
  • ベタ基礎を採用する場合に注意しなくてはいけない点は、盛土の中に人頭大よりも大きな瓦礫(建築廃材)などが混入していると、基礎に接触した瓦礫がテコの支点として作用して、基礎が割れたり、不同沈下を誘発する可能性があるため、少なくとも基礎に接触する瓦礫は除去するか砕くかして、基礎の下面が一様な地盤となるような配慮が必要です。
    ※ 測点間の値に差異が顕著であるのも地盤のバランスが悪いことを表しているので、十分な転圧締め固めによってバランスを回復することも肝要です。
  • 軟弱地盤に建つ建物は、より耐震性能を高める必要があり、筋交いを入れた壁(耐力壁)をバランス良く多めに配置したり、ホールダウン金物で基礎と土台と隅柱を結合するなどの補強を講じるのがよいでしょう。
  • 地盤改良をすれば、沈下対策としても有効ですが、地震動を多少なりとも軽減する効果を期待できます。
  • 改良の費用が60万円程度というのは、砂利か瓦礫混じりの盛土層を貫入させることを考えれば、当社で請負える金額ではありません。このような盛土を改良するのは、通常よりも時間と手間がかかるはずだからです。
  • 尚、改良工事の費用を建築会社で負担する可能性はほとんどないと思います。
  • ご提示の地盤調査結果から設計できる地盤改良は柱状地盤改良(ソイルパイル)工法です。
  • たとえば、国道沿いで発生していた交通振動が、その場所に立っているだけで、改良工事施工当日から体感で分かるほど減少するということを、何度も経験しています。(まれに例外もあるので確答できないのがやっかいですが・・・)
  • 改良工事の積算は、基礎通りの総延長距離と軟弱層の厚さよって本数と改良長が決定され、おそらくそれに瓦礫を鋤き返す処理費が加算されることになります。本数を割り出すことなく概算もないのですが20万円程度は高いと想像します。しかも建築会社としては改良業者からの金額にいくらかの経費を載せるはずなので、さらに高くなってとても60万円では請負えないだろうということです。
  • 地盤改良工事は沈下対策として設計されるのであって地震対策の決定打ではありません。たとえば改良体の頭部と基礎とは互いに鉄筋で結合されているわけではないので、地盤が建物を拘束して地震動から守るという設計ができないものを、どうやって保証するか理解しかねます。当社では地震は免責扱いです。損害保険会社をあてにせず、よほどその会社に余剰金がストックしてあるというのであれば別ですが、大量に損壊が発生する地震時に対応できるだけの内部留保は無理でしょう。
  • 地盤改良の施工精度は、どれだけ丁寧にセメント系固化材と土とを混合するかにかかっています。当社では1日当たりの施工数量の限度を決め、時間を短縮して安くあげるということをしていないのです。当たり前のことですが、改良体の打設間隔や固化材の添加量についても根拠を申し上げることができますが、それを説明できない業者もいるのが、この業界の未成熟なところでしょう。

【 お願い 】

ご相談の事案に対する回答は、限られた情報によって推測される所見であることをご承知ください。
したがって、この回答を直接的に交渉や請求の手段とすることはご遠慮くださるようお願い申し上げます。