「あなたの土地は大丈夫?」知らないと損をする地盤のこと vol.22

このページで使用している画像、文章は「株式会社 扶桑社」の了承を得て転載させていただいております。
「新しい住まいの設計」

1995年10月号

(解説・監修 ジオテック株式会社 住宅地盤相談室)

ススンでいる横浜市。耐震診断は無料。改良工事は2%融資

阪神大震災から約半年経過した現在、さまざまな分野で兵庫の教訓を生かすべく、具体的な震災対策が出てきているようです。

停電になるとスイッチが入るフットライトを新築建物に標準装備したり、基礎と構造の部材をより強力に繋ぎ止めるための「ホールダウン金物」を採用するケースが増えているなど、住宅メーカーから提案されている例ですが、地盤調査も震災前に比べると増加傾向にあるのは事実です。

とくに関西の営業所を中心として調査件数が急増しているのですが、それ以外の地域でも建主の強い要望を受けて、これまで地盤調査の方法を見たことのなかったような工務店から初めて地盤調査の依頼が続くという現象には、今さらながら驚いています。しかも漠然とした不安にかられていた地盤が、調査をした結果予想よりも良好で、経費のかかるべた基礎を採用せずにすんで感謝されたり、調査の手軽さと確かさを気に入られたりと、地盤のことを少しでも気にかけてもらえるのは嬉しい限りです。

震災の影響ばかりではなく、今夏施行されたPL法(製造物責任法)も地盤を重視していかざるを得ない引き金になっているようです。何か不具合が起きた時に、その原因を究明するためには、地盤のデータを保存しておく必要があるというわけです。すでに昨年あたりからPL法をに施行をにらんで、着工物件の全棟について地盤調査をしたいとの申し入れが数社からあり、実際そのような抜本的な見直しが行われました。

ところで行政サイドにも注目すべき動きがあります。地盤災害については、かねて災害回避マップを整備するなど県単位で積極的に取り組んできた神奈川県で、横浜市が、古い木造家屋の耐震診断を無料で行うと言うニュースです。

木造住宅耐震診断士を市独自に養成し、1980年以前に建築された木造家屋28万戸の中から、当面3年間で1万2000戸を診断する方針で、その際の診断経費を市の予算ですべて賄うという制度です。

さらに徹底しているのは、補強が必要とされた建物について、補強が必要と判定された建物について、改築・改修の費用についても横浜市が低利で融資するというもので、耐震改良工事融資制度を創設するとのこと。利率はなんと2%です。兵庫では古い木造家屋の倒壊による死者が多数を占めたことが、このような制度の発足に寄与しているのは間違いありませんが、人間の生死に直接かかわることで、しかも一刻の猶予も待たず実行に移されなくてはならない問題を行政レベルで推進しようというのは大変な英断ではないでしょうか。

※ちなみに横浜市の高秀市長は、もともと土木工学博士として建設省の次官を経験されているだけに、地震に対する関心も並々ならぬものがあり、「大地震、市長は何が出来るか」という著書を出版されています。