「あなたの土地は大丈夫?」知らないと損をする地盤のこと vol.7

このページで使用している画像、文章は「株式会社 扶桑社」の了承を得て転載させていただいております。
「新しい住まいの設計」

1994年7月号

(解説・監修 ジオテック株式会社 住宅地盤相談室)

相談内容

埼玉県 与野市 後藤茂生さん(仮名・62歳)


川沿いの土地。気に入て住んでいましたが、最近襖のたてつけが悪くなって、軟弱地盤だとわかりました。今更住み替えるわけにもいかず...。


建てて12年の後藤さん夫妻の家は、すぐ裏を川が走っています。夏は川面の風が涼しく、また川沿いの緑がとてもきれいで住宅環境としてはとても気に入っていました。ところがここ数年襖やサッシのたてつけがなんだかわるいのです。

「もう家のガタがきたのかとガッカリしていました。ところが家自体が悪いんじゃないんですね。地盤が悪かったんです」

後藤さんがそのことを知ったのは、あるテレビ番組で軟弱地盤のことを聞いたからです。

「いやあ地盤が軟弱だということがあんなに大変なことなんだって、はじめて認識しました。だって基礎に亀裂が入るのも、建具のたてつけが悪くなるのも、みんな軟弱地盤のせいで、家が沈んだ結果だっていうじゃないですか。川沿いの環境のいい場所だと満足していましたが、家の価値はそれだけじゃないなて今は思っています」

とはいっても今さらおいそれと引っ越すわけにはいきません。それに結婚して都内のマンションにくらしていた息子夫婦が子供が生まれるのを機に同居したいと言い出しました。

「で、思い切って2世帯住宅に建て替えてる時に地盤の調査もしようと考えて、知り合いの工務店に相談したんです。そしたら費用はそんなにかからないんですね」

後藤さんが相談した工務店は地盤の悪い与野市の建築にあたってしばしば地盤調査をしていたとのこと。後藤さんのもとには調査の結果が「地盤調査報告書」として届きました。

「地盤を補強して建て替えたら、今度はしっかりした家が建つということです。これで住み慣れたこの土地を離れずにすむかと思うと、今はとても安心した気分です」

老後の暮らしまで心配になっていた後藤夫妻にやっと笑顔がもどりました。

回答

ここでいう地盤調査はスウェーデン式サウンディング試験(以下SS試験と略)といって、この4、5年で急速に普及してきた戸建て住宅向けの調査です。大都市圏の住宅メーカーのなかには、SS試験の結果を参照しないかぎり基礎の設計に着手しないというメーカーもあるくらいです。今までの地盤調査といえばビルなどを建てる際に行われていたボーリング試験が一般的で、作業スペースをかなり必要とし、コストも数十万円単位の馬鹿にならない金額でした。

SS試験の場合は、仮に家屋が建っていても、庭先の狭い場所での作業が可能です。ひとつの宅地で通常3ポイントを測定し所用時間も2時間程度とわずかです。

後藤さんがもらった「報告書」には測定値は勿論のこと、どのような対策を講じるべきかの診断が明記されています。

実測作業とデータ解析、報告書とも一式で6万円。総工費数千万年の買い物をするための安心料と思えば決して高い金額ではないでしょう。

お尋ねの与野市は霧敷川や鴨川という河川沿いに超軟弱地盤をかかえており、この谷筋では不同沈下が多発しています。おそらく戸建て住宅で一般に採用されている標準的な基礎(1平方メートル当たり5トンの重さで設計されている)では対応できないだろうと思います。

当たり前のことですが、どのような建物であれ空中に浮かんだままは建築されません。地盤と建物lはあくまでも一体のものであり、地盤も建物の部材の一部であると考えるならば、地盤の性能をないがしろにせず、きちんと点検する必要があるのです。


教訓

軟弱な地盤だからといってすぐに住み替えることを考える必要はありません。手軽な調査で安心を買ってください。