「あなたの土地は大丈夫?」知らないと損をする地盤のこと vol.16

このページで使用している画像、文章は「株式会社 扶桑社」の了承を得て転載させていただいております。
「新しい住まいの設計」

1995年4月号

(解説・監修 ジオテック株式会社 住宅地盤相談室)

相談内容

千葉県 船橋市 加瀬英三さん(仮名・39歳))


3階建てを建てるつもりですが、地盤調査をする必要はありますか?


敷地を有効に利用するために木造3階建ての住宅を計画しているのですが、一般的な2階建てに比べ地盤のことで注意をしなければいけない点がありますか?

設計をお願いしている建築家さんの説明では、建物の高さに関する建築基準法上の規制が厳しいことを強調されていたくらいで、地盤や基礎については特に説明がありませんでした。しかし、高さが高くなった分だけ建物は重くなっているはずで、重くなれば沈下しやすいと思うのですが、沈下して建物が傾いてしまわないようにする手立てはあるでしょうか?

回答

3階建ては隣接地に及ぼす日影について繊細な配慮をしなくてはならないので、法的にも規制が厳しくなっていますが、それ以外にも防火の規定や構造上の検討などで、2階とは異なることがあります。

構造上にまず問題とされるのは、「横力(よこりょく)」といって、建物に働く水平方向の力です。地震や風当たりで建物が横に揺さぶられる際に、建物が突き上げられて基礎が持ち上がってしまうトラブルを防止しなければならないのです。2階建てから3階建てになると風を受ける壁の面積が大きくなるので、台風の突風など風圧の検討が必要となるわけです。

さて次に3階建てで注意しなければいけないのは、建築確認申請の際に「構造計算書」という書類を添付するよう役所から求められることが多いという点です。この計算書は2階建ての場合は不要です。しかも構造計算書を作成するにあたっては、定められた試験(ボーリング・標準貫入試験や平板載荷試験)を実施し、地盤の強度をあらかじめ想定することが不可欠なのです。すなわち「構造計算書」と提出の有無は、そのまま地盤調査とセットになっているというわけです。

最近、東京都の一部地域で、限定的にスウェーデン式サウンディング試験という、戸建て住宅で最も普及している試験を上記の試験で代替できる特例が認められる方向にあるのですが、ボーリング・標準貫入試験などは、ビルや擁壁を築造するための調査として行われたという経緯があり、住宅では滅多に採用されていなかった試験です。

そもそも調査のスペースを確保することが戸建て住宅では困難な上に、費用もばかになりません。木造3階建てという住宅の新しい形態に対して、旧態の基準法がブレーキをかけているような印象を受けますが、現状ではこれを提出しないと確認申請を受け付けてもらえないのだから仕方ありません。

建物の荷重は階数の相違によって異なるのは勿論のことであり、3階建てはそれだけ重いので、ご質問にある通り沈下の検討も慎重を要するのですが、実は、基礎の形状を変更することによって、増加分の荷重を分散させる事が可能なのです。

住宅の基礎は、断面をみるとアルファベットのTの字を逆にした形(⊥)で地盤に接しているのですが、その接する基礎の幅を拡張してやると、荷重が分散するのです。つまり、実質的に地盤に伝わる重みは3階建てでも2階建てと大差をなくすることができるのです。2階建て用の基礎幅のままを3階建てに流用すると、不同沈下によって建物が傾いてしまいかねませんが、基礎の幅を広げて荷重を分散させて地盤に伝えるとができさえすれば、たとえ軟弱な地盤であっても影響することが少ないのです。

ご心配の沈下については、3階建て用の基礎で対応できないほどの軟弱地盤であれば、2階建て用の基礎で2階建てを建築しても不具合が生じてしまいます。3階建てだから調査が必要で、2階建ては不要というこではなく、まずは地盤調査から始めて、それぞれの地盤に適した基礎形状を決定するのが肝心なことです。


教訓

盛り土など人為的に作られた土地を購入するときは慎重の上に慎重に。地盤調査することをお勧めします。