「あなたの土地は大丈夫?」知らないと損をする地盤のこと vol.19

このページで使用している画像、文章は「株式会社 扶桑社」の了承を得て転載させていただいております。
「新しい住まいの設計」

1995年7月号

(解説・監修 ジオテック株式会社 住宅地盤相談室)

軟弱地盤ほど地震の揺れは増幅されやすい

兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災の地震としての名称)のもたらした被害は慄然とするとするほど大きく、鉄道や道路が修復されるにつれ、かえってその惨状ををあらわにしてきているようです。JR東海道本線の各停車駅を大阪から姫路方向へ進むと、西宮駅を通過するあたりから、車窓には信じられないような光景が連続し、それまでざわついていた車内が息をのんだように静かになるほどです。

先の震災では、建物の倒壊などの被害が東西方向の帯状に集中していることが、さまざまな研究機関によって指摘されています。海岸よりの阪神電鉄本線からJRを挟んで六甲山麓を走る阪急神戸本線までの南北に1キロあまりの狭い範囲で震度7の激震となり、家屋の倒壊率も30%を超えます。JR線は、まさに激震地域の真ん中を貫通するように走っており、倒壊した家屋や今にも倒れそうなビルが次から次へと目に飛び込んでくるのです。

地震の規模は,一般には0から7までの震度階級で発表されますが,兵庫県南部地震の場合、発生日は震度6と発表されだものが、現地の被害の状況などを加味して一部の弛域が震度7に上方修正されています。

  1. どうして被害が細長い帯状の範囲に集中したのか?
  2. 被害の程度と地形分類に因果関係はあるのか?

私どもは住宅地盤と地震の関連という観点で、震災の直後から数次にわたる現地踏査を行ってきました。建設省国土地理院で発行している「土地条件図」の中から「神戸」と「大阪西北部」というタイトルの地形図を手掛かりに、帯状の被害集中域をさらに細分化して、実際に徒歩で確認していくのです。

神戸、芦屋、西宮の市街は背後から六甲山系が迫った「海岸低地」に発達しており、元もと地場安定した地域とはいえませんが、総じて海岸低地と概括できる地形の中にも、河川や水路沿いの「谷地」もあれば、「扇状地」や「自然堤防」、山麓の裾野にあたる「台地の低地面」と呼ばれる特有の地形が混在しています。混在の仕方は住宅地図などで確認できる街区単位(丁目・番地の番地)で変化し、たとえば10分で歩ける距離でも、台地・扇状地・海岸低地などが交互に分布していて、道路もかすかな上り勾配になったり、ゆるやかな下り坂に移行したりするのです。

さて、このような微妙な地形の変化と実際の家屋の被害とで何らかの相関性があるのかといえば、あらためて驚くほどの差が確認されるのです。家屋の被害は、新聞報道などで繰り返し強調されていたように、古い木造建物が全半壊しているのがやはり目立つのですが、同じ古い家屋でも、台地と呼ばれる高台(地盤は良好)では被害が少なく、逆に、高台であっても水路に隣接している場所や海岸低地(地盤は軟弱)では、数件の家屋が軒並み大破しているのに出くわします。

その差は歴然としており、損壊家屋の解体が進んで周辺一帯がぽっかりと空き地になっている場所は、かならずといってよいほど軟弱地盤に重なるのです。

家屋の倒壊率の大きかった場所については、活断層の直上であった場所、山ぎわの地形の変化点で地震波が基盤に反射して複雑な揺れが生じた場所でも局所的に倒壊率の高いことが指摘されているのですが、活断層が確認されていない地域でも被害が集中している場所があるのです。

すなわち、揺れのメカニズムは一様ではありませんが、同じ地震動でも軟弱地盤ほど揺れが増幅されやすいことは確かで、今後、調査機関から発表される詳細の報告を待てば、かなりの精度で地形と被害状況との照合が可能ではないかと期待されています。